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Interview

住まい手の美意識を投影した、グリーンが映えるミニマルな空間

Hair Sallon Regalo
店舗兼住宅新築
住まい手の美意識を投影した、グリーンが映えるミニマルな空間 住まい手の美意識を投影した、グリーンが映えるミニマルな空間
Interview

春日井市西部。旧店舗から南へ200mほどの場所へ、2021年に移転リニューアルしたヘアーサロン「Regalo」は、オーナーのこだわりが詰まった住居兼ショップとしてリスタートを切りました。
オーナーである細江さんの想いを整理し、新たに紡ぎ直していくように、一歩一歩築き上げた家づくり。
そのプロセスや、街の風景にクラス感をプラスする新たな空間に込めた想いについて、デザイナーの窪野がインタビュー。細江さん夫妻と共に、そのストーリーを振り返ります。

店舗デザインで培った
センスとスピード感、柔軟さが決め手に。

窪野

はじめてお会いしたのは、確か前職時代。数年前の忘年会の席ですよね。

施主

そうそう。コロナ前は美容関係者をはじめ、知人や友人を招いて毎年、忘年会をやっていたからね。上司の方と一緒に来てくれたのを覚えています。

奥様

懐かしい〜。

施主

AND GO DESIGNにはじめてお仕事を依頼したのは、旧店舗を開業してから7年くらい経った頃、リニューアルをお願いした時。自宅キッチンのリフォーム時にもお世話になりました。そういうこれまでの経緯もあったから、好みのテイストをわかってくれているし、今回の住居兼ショップも安心して任せられた部分はありました。

奥様

今回は特に店舗を兼ねた建物の新築だったので、住宅だけの時よりシビアに考えたという面はあります。万が一工期が遅れたり、完成後に何かあったりしては、お客さまやスタッフをはじめ多くの方に迷惑をかけてしまいますから。店舗を任せられるという信頼感と店舗デザインで培ったセンスが決め手になったよね。

施主

そうだね。正直、他の設計会社やハウジングセンターなど何社か声をかけていたんだけど、最終的にはプレゼン内容で選ばせていただきました。気心が知れているから、多少のわがままなら聞いてもらえそうという気持ちもあったかな(笑)。

奥様

住宅メーカーでも、店舗併用型を受けてもらえるところはいくつかあったんだけど、竣工まで最低1年半はかかると言われて。AND GO DESIGNのスピード感や相談した時の柔軟さも魅力でした。

施主

そうそう。どうしても令和3年3月3日にオープンしたいという想いが強かったので、逆算した時にクオリティとスピードを両立してくれるところはAND GO DESIGNしかないかなと思って決めました。

店舗も住宅も天井高を確保し、
解放感のあるリビングを実現。

窪野

プランの中での第一関門は天井高でしたよね。1階の店舗の天井を高くしたいという希望があり、それを叶えるためにはリビングの床が上がってしまう。そこで、キッチンダイニングを一段低くしてスキップフロアにしましょうという提案をしました。

施主

天井高に関しては、結構無理をお願いしました。店舗も住宅もハイドアにしたかったので、天井ギリギリの所まで扉が高くなるようにしてもらって。廊下のドアも、当初の予定では2400mmになっていたんだけど、以前の自宅が2700mmだったので、それより低くなるのは避けたいとお願いをして急遽2700mm〜2800mmに変更してもらいました。

窪野

リビング階段にするという点も、優先順位の高いオーダーでした。

奥様

前の自宅を建てる時は、生活空間とリビングを分けたいという気持ちが強かったので、玄関から直接2階に上がれるような設計になっていました。でも今回は、いつでも家族の気配を感じられるようにリビング階段にしたいなと思って。

施主

息子が小学3年生になって、お友だちを連れてくる機会が増えたり、ゲームをしたりと部屋にいる時間が多くなったことも一つの要因です。リビング階段にすることで、何気ない会話が生まれたり、お友だちとも顔を合わせてあいさつを交わしたり。コミュニケーションのシーンを増やすことで、親子の信頼関係にもつながるかなと思っています。

窪野

広いベランダでBBQをやりたいとお話されていましたが、実現しましたか?

奥様

まだBBQはしてないです(笑)。

施主

今は、僕の趣味であるグリーンをもっと増やしたいなと思っています。

奥様

主人の影響もあって息子も植物が大好きなので、家のグリーンのお世話は息子も手伝っています。植物を育てる心が養われるのはいいかなと思います。

施主

最初ベランダの塀の部分をガラス張りにしようという案もあったけど、洗濯物が外から丸見えになるのは避けたいという話になり、高めの塀にしてもらいましたよね。窮屈な印象になるかなと思ったけど、リビングとベランダの間のガラス窓を開けた時に、中央にフレームがないスタイルの窓にしてもらったことで、すごく解放感がある造りになりました。

先のことは考えすぎず、
今の価値観にフィットする心地よい空間に。

窪野

細部まできっちり決めてスタートしたというより、センスのいいご夫婦に教えてもらいながら、一緒につくり上げたという印象がすごく強いです。

施主

僕は結構せっかちなタイプだから、思いついたらすぐに電話していましたよね。

窪野

旧店舗がすぐ近くにあるから、何かあればすぐに相談できましたし、細江さんも時間があればこまめに現場に足を運んでくださって、いろいろアドバイスをいただきました。

施主

現場の人には迷惑だったかもしれないけど(笑)、「ここ、図面と違うんじゃない」とか聞いたりして。先ほど話に出た住居部分の廊下の天井高も、現場を見ながら急遽「もっと高くしてよ」ってお願いしました。現場の方はやり辛かったと思うけど、臨機応変に対応していただき、ありがたかったです。

窪野

本当に、現場監督並みの厳しいチェックでしたよね(笑)。

施主

住居部分の玄関の塀の高さも、現場でお願いして変更してもらったんですよ。最初はもう少し低かったんだけど、玄関の扉を開けた瞬間、家の前を歩く人と目が合ったら嫌だなと思って。ブロックを3、4段増やして高くしてもらいました。

窪野

玄関の塀を高くしたことで、より住居感が薄まりましたね。

奥様

玄関の段差とか玄関からリビングへ上がる階段とか、この家は階段が結構多い造りですよね。前の自宅を建てる時は老後のことまで考えていたけど、今回の家は「先のことはわからないから置いておこう」と吹っ切って、今の私たちが住みたい家、今の価値観にフィットする暮らしにこだわったから、すごく心地よい空間になりました。

足し算よりも引き算の感覚を
重視した空間づくりで動線がシンプルに。

窪野

本格的に住み始められてからお邪魔するのは初めてですが、住み心地はいかがですか。

奥様

すごく住みやすいですよ。

窪野

前の家の方が部屋数は多かったですよね。

施主

以前は2階建てだったので、朝の身支度の時に階段を上ったり降りたりが大変で。着替えを取りに行くだけで、家の中を1分以上かかって移動していた気がする。今は必要なものがコンパクトにまとまっていて動線がすごくシンプルになった分、すごく暮らしやすくなりました。

奥様

そうそう。ファミリークローゼット、ランドリールーム、洗面所、浴室が1フロアで一直線につながっているから、家事の動線的にもすごく負担が減りました。

施主

足し算よりも引き算の感覚に重きを置いて、何を削ぎ落としていくかということを突き詰めていったから、無駄のない快適な空間になり、満足しています。

窪野

お2人の性格もあり、生活感がない空間をイメージしながらデザインしましたが、想像以上に物が少ないですよね(笑)。リビングにテーブルとかも置いていないんですか?

奥様

はい。我が家はテレビを観る習慣がないので、リビングでくつろぐことがほとんどないんですよ。

窪野

お茶はどこで飲むんですか?(笑)

奥様

ダイニングですね。じっとしていられない性格なので、あまり座っている時間がないんです。家族それぞれが思い思いに過ごしていることが多いのですが、別々のスペースにいても、何となく常に気配を感じられるというのがこの家の魅力だと思います。

窪野

ショップ兼住宅の場合、店舗と住宅をつなぐ内階段を造るケースも多いのですが、今回は造りませんでしたよね。

施主

職場と住まいが同じ建物だと、オンオフの切り替えが難しいという話を聞くこともあるのですが、敢えて内階段を造らないことで、しっかりと境界線を引こうと思ったんです。アットホームな店というと聞こえは良いですが、美容院という店の性質上、生活感が出過ぎてしまうことでリスクもある。お客さまによっては、テンションが下がってしまう方もいるかなと思って。僕自身も、一旦自宅の玄関を出るという行為によってスイッチを切り替えられています。

施主

僕は欲張りでいろいろとこだわりを詰め込みたいタイプなので、無理難題も多かったと思いますが、この建物はAND GO DESIGNにしかできなかったと思っています。ありがとうございました。実は今、お店の増床などすでに次なる展開を構想中なので、ぜひ次も面白い提案を期待しています。

窪野

僕自身、今回は一緒にいろいろなチャレンジをさせていただき、お2人のこだわりや感性にもたくさん刺激をいただきました。ぜひ次の機会もよろしくお願いします!ありがとうございました。

文:花野静恵 写真:村上智哉(TOMBOY)